仕事の寸法、仕事場の寸法。竹の工芸家の悩みごと

 

 いま取り組んでいる仕事のひとつでは、私にとってこれまでで最も長い竹を扱っています。私の仕事場の横幅とほとんど同じ長さの竹、この場所での限界の長さです。

 

 農具や漁具など、実用品の大きな竹カゴの細工をされる方は、竹林から切り出して枝を落とした、目一杯の長さの竹を扱われると思います。長い竹から、長い竹ひごを作り、それを扱える、また保管できるスペースと技術があれば、素材としての竹は長いに越したことはありません。

 

 私の場合、大きな籠は作りません。主に作るものは茶の湯の道具や室内で使う日用品の竹籠、そして美術としての竹籃ですので、長い竹が必要な場面は多くありません。

 

 また、実際の問題として仕事場が狭いので、長い竹を扱うことがそもそも出来ない事情もあります。

 

 長い竹が必要ないから仕事場が狭くて済むのか、あるいは仕事場が狭いから長い竹を要する仕事はしないのか、どちらが先かは分かりませんが、仕事場の環境と仕事の中身とは互いに影響し合うものだと思います。


たいへん長く、そして美しい白竹
たいへん長く、そして美しい白竹

 上の竹はいま仕事をしている竹の一部分です。まだまだ長いうちに入らない長さではありますが、実際に扱うと、長さゆえの問題が色々と出て来ます。

 

 まず、仕入れにおいて輸送が難しい。一度に大量に仕入れるのであれば、大型のトラックに満載・輸送する融通も利くかと思いますが、まず私にはそれだけの保管場所がありません。

 

 私は基本的に、束にして売られる竹ではなく、1本ずつに値段のついた美術工芸や茶室、日本建築向きの竹を寸法を指定して仕入れています。一度に仕入れる量も多くありませんので、運送会社さんも一台のトラックに少量の竹では割に合わないこともあり、一定の長さ以上の竹を少量ずつ輸送していただくことには、少々の無理が生じます。そして、色々と高くつきます。

 

 今回はお願いをして、やや限界オーバーの長さで送っていただきました。実は途中で輸送がストップするアクシデントがありましたが、最終的には無事到着。とはいえ、困難はまだつづきます。


真竹の白竹の肌艶
真竹の白竹の肌艶

 竹を割るには、理想的には竹の長さの倍のスペースが必要です。自分が座っている位置を中心にして、加工した竹を後ろへ送ったり、反対に前へ進めたりします。

 

 たとえば木工所で工作機械が丸太を加工している様を思い浮かべていただくと、分かりやすいかと思います。機械は移動せずに丸太が移動して加工されてゆく、それと同じです。

 

 竹を方向転換することも考えれば、竹の長さの2倍×2倍の床面積があれば理想ですが、少なくとも一辺にそれだけの長さがあれば、とりあえず仕事はできます。

 

 そして、いまの私の場合、竹の長さと仕事場の長辺の長さがほとんど同じということは、竹を動かさずに自分が前後に移動するしかありません。これはかなり効率の悪い作業になります。それを承知で引き受けた仕事ですから仕方ありませんが、想像以上に困難な仕事になってしまいました。

 

 今後、これだけの長さの竹を扱う機会はしばらくないと思いながらも、もっと広い仕事場が欲しいなと、久しぶりに身をもって感じる、文字通り痛感するところ。

 

 とはいえ......広ければ広いなりの悩みもあるでしょうし、広い場所を借りればそれを維持するための仕事をすべき状況にもなるでしょう。たぶん悩みは永遠に尽きないとは思いつつ、仕事と仕事場の寸法に今日も頭を悩ませています。