竹組亀甲酒籠|酒と器を愛することに妥協なき遊び、数寄のための竹籠

 

 先月の個展の準備の最中、夏のある日のこと、特別注文の竹工芸として制作しておりました竹籠をお納めしました。酒の器、盃を収めるための籠「酒籠(sasa-kago)」です。

 

 かなりの長期間お待たせをして、ようやく仕上がった籠は、私のこれまでの仕事の中でも最高の仕上がりといえる作品のひとつになりました。

 

 『竹組亀甲酒籠』

 

 内と外、二重に竹を編んで組み合わせ、ふっくらと丸みを帯びた六角形に仕上げた蓋物の籠です。


『竹組亀甲酒籠』(2018)盃、酒器を収める蓋物の籠(Fujifilm X-T20)
『竹組亀甲酒籠』(2018)盃、酒器を収める蓋物の籠

 以前にも、べつの姿の酒籠のご用命をいただき、ふたつめの酒籠として制作をお引き受けいたしました。前回の籠も、私にとっては大事な作であり、自信をもってお納めしたものですが、ふたたびのご用命ということでそれを上回る作を目指して制作をしました。

 

 これまでの私の経験と美意識、竹工芸の技術のすべてを発揮して、一つの形にまとめるべく仕事をし、目で見たときの美しさにくわえて、実際に手にし、所有した方だけがさらに味わうことのできる特別な質感が備わるよう制作しました。

 

 その目標を自分としては達成することができ、またお客様にも期待以上の仕上がりと満足していただくことができました。私の仕事の歴史にとって、たいへん重要な仕事をさせていただく機会を得ましたこと、ありがたくおもいます。


『竹組亀甲酒籠』(2018)蓋を開けて。内張りは後に(Fujifilm X-T20)
『竹組亀甲酒籠』(2018)蓋を開けて。内張りは後に

 籠の中に収める品は酒の器、盃ですが、制作においては茶道具を収める茶籠づくりの経験が生きています。大きさがずっと小さくなるぶん、細工はより細かく、竹の力をうまく逃す余地も少ないので、仕事はより困難になります。

 

 内側の器物の収まりがよいよう、そして蓋の収まり、蓋を閉めた時にも、開けた時にも美しいように、カーブを調整しながら仕上げました。

 

 写真では分かりませんが、籠の色味においても、深い艶や陰影を見せながら、新作でありつつも古作の酒器とも調和するように、竹の選定から漆の仕上げまでの工程に留意して制作しております。


『竹組亀甲酒籠』(2018)蓋の編み目を見せて(Fujifilm X-T20)
『竹組亀甲酒籠』(2018)蓋の編み目を見せて

 籠の内張については別途、お客様のほうで古裂や内張の手配をされ、少しずつ籠の完成に近づけてゆかれます。籠の作者の私にとっても、盃が収まった姿をまた目にする楽しみが残されており、余韻の長い籠になりそうです。

 

 特別注文品である酒籠は、一年、二年、それ以上の単位の時間でお引き受けをしており、たいへんお待たせをいたしますことが心苦しいものです(まだお待たせしているお客様もいらっしゃいます)が、それだけの時間を掛けての仕事をお任せいただけることは、たいへんありがたく、また仕上がりの喜びも自分自身にとっても大きなものです。

 

 両手の平の上に収まるほどの小さな酒籠は、私にとってはとりわけ大きな、大事な作品のひとつとなりました。