煤竹茶杓を漆で継ぐ

 

 梅の頃から補修を続けていた茶杓がそろそろ仕上がります。

 

 もともとやや薄づくりで寂びた景色の茶杓でした。節の部分で破損してしまったとのご連絡をいただき、お預かりをして調べましたところ、漆で直すことができそうでした。以来、少しずつ漆を重ねて補修をし、紫陽花の季節になって、ようやく仕上がりというところです。


茶杓の破損個所を漆で継ぎ、さらに漆の層を重ねて補強
茶杓の破損個所を漆で継ぎ、さらに漆の層を重ねて補強

 節裏、横方向にギザギザした線がうっすらと見えますでしょうか。竹が水平方向に断裂する際にはギザギザとした繊維が露出します。そのギザギザとギザギザ、互いの凹凸をうまくはめることで、大きな表面積で継ぐことができます。(縦の小ヒビはもともとの景色です)

 

 まずは漆を凹凸に塗布して、茶杓の節上と節下を合体、それが固まるまで半月ほど待ちます。その後、周辺も含めて漆を塗布しては固めての工程を数日置きに繰り返します。

 

 漆は乾燥(固化)するのに高い温度と湿気を要する特殊な性質をもった天然接着剤です。いっぽうで茶杓の櫂先の矯め(抂げ)は、高い温度と高い湿度では伸びて元に戻ろうとします。その相反する条件のバランスを取りつつ作業をすすめました。


褐色の煤竹に漆が重なり、茶杓の景色もあらたまります
褐色の煤竹に漆が重なり、茶杓の景色もあらたまります

 とくに、はじめのうちは継いだ箇所の強度にもじゅうぶん注意して、ふたたび折ることのないよう、慎重に漆を重ねます。いまはふつうに扱っても問題ないほどの強度になりました。

 

 合成接着剤を使わずに、ひたすら漆を重ねて直していますので、時間は相当に掛かってしまいますが、補修という第一の目的に加えて、美的な意味においても時間を費やしただけの成長をしたように、作者自身として見ています。


補修の仕上がり間近の煤竹茶杓、全景
補修の仕上がり間近の煤竹茶杓、全景

 スローな漆ではなく、強力な合成接着剤を用いれば、一日で補修完了も可能かもしれません。どちらがよりよい方法かはそれぞれに考え方があると思いますが、時を吸収して形づくるような漆の性格は、煤竹や茶道具とも調和する有りようだと私は感じます。

 

 ぶじに仕上がって、お客様にも気に入っていただけますように、もうすこし。