煤竹旅茶杓、素材からの妄想を経て完成へ

 

 9月の展示を目指して旅茶杓も。

 

 煤竹の下拵えをし、しばし寝かせ、選んで削り、また選んで仕上げてを繰り返しています。削るまえの姿として、写真を一枚掲載します。二点のうち、下の煤竹を茶杓に仕上げました。


茶杓となる煤竹を大まかに削り、枉げてのちしばし寝かします
茶杓となる煤竹を大まかに削り、枉げてのちしばし寝かします

 節下に幾つか斜めに走る刀目と、節上右の擦れ傷が見どころになっています。写真では分かりにくいですが、細めの薄い竹であるため丸みを帯びた姿で、その稜線が光っています。

 

 鋭い刀痕やゴツゴツとした節の芽痕といった、野武士のような竹の素性に過剰に引っぱられることなく、丸みを生かして優しい心が残るような姿に仕上げたいと思いました。

 

 いまは浪々の身とはいえ、かつては家中において一目置かれた遣い手であり人格者......といった妄想をしつつ削ります。


煤竹旅茶杓、櫂先は一文字に
煤竹旅茶杓、櫂先は一文字に

煤竹旅茶杓、節下の丸み
煤竹旅茶杓、節下の丸み

 そんな妄想をよく反映した姿に仕上がりましたでしょうか。仕上げに、煤竹の皮目のほうにだけ拭き漆を何度か施しました。

 

 先ほども記しましたように細くて薄い竹ですので、もともとの厚みを残しています。竹の内側のカーブが、そのまま裏に凹面として残っており、手に取ったときに、ふつうの茶杓とは異なる凹凸が感じられる茶杓です。

 

 この茶杓はひと月後に、愛知県内での展示にてご覧いただけます。