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煤竹花入に貝母|竹工芸家日記、三月

 

 三月になりました。こんにちは。

 

 どことなく落ち着かない空気です。冷静に見つめながら、かたちのない「空気」に盲目的に追従することのないようにせねばとおもいます。

 

 街路には花が見られるようになってきました。ただ用足しに出かける道も、花があれば楽しいものです。おなじく室内にも、花があれば心が落ち着きます。


煤竹の掛花入に貝母(アミガサユリ)
煤竹の掛花入に貝母(アミガサユリ)

 煤竹のよいところを選んで、注意深く水平に切った、きわめてシンプルな竹花入を、このごろの私はとりわけ気に入っています。長い時を経た竹の姿は四季おりおりの花を受け止めて、飽きることがありません。


貝母(アミガサユリ)の花
貝母(アミガサユリ)の花

貝母(アミガサユリ)の花
貝母(アミガサユリ)の花

 アミガサユリの名は、花びらに透けて見える網目のような模様から名づけられたそうです。写真に写っているこの花では、はっきりした網目ではありませんが、「網」「編み」の音に親近感を覚える名前です。

 

 室内ですごす時間の長くなりそうな三月です。部屋に一輪の花があると、意外なほど心が落ち着くように自分は感じます。もし手元に花入がなくとも、コップやお皿に少しの水を張って。

 

 わずか一輪の花をちかくの花屋さんで求める、その行為も、小さいけれど自分の町をよくすることにつながるかもしれませんね。