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竹籠と菜の花。制作中の仕事より

 

 こんにちは。遅い春一番がやってきて、町の空気が入れかわったようです。

 

 寒かった冬のせいか、草花の時期も少し遅れて、もうおしまいと思っていた梅がまだあちこちで蕾を付けています。道を歩いていてどこからともなく届く梅の香りは、寒い冬に耐えた褒美のようです。

 

 次の展示に向けて制作中の籠に、菜の花を入れました。すべて制作途中ですので籠にオトシは入っていません。


細身の竹籠に菜の花 竹工芸家 初田 徹
細身の竹籠に菜の花

細身の竹籠に菜の花 竹工芸家 初田 徹
竹籠は制作途中です

 私が花の器としてつくる籠は、多くの場合、拭き漆で仕上げます。長いあいだお使いいただくための耐久性を考えてのことです。

 

 漆を用いない場合に比べて、光や水気が籠に与えるダメージを軽減できることを期待しています。とはいえ自然の植物繊維、植物樹脂ですので、光や水気はなるべく避けるのが吉ではあります。


六つ目編みの竹籠に菜の花 竹工芸家 初田 徹
六つ目編みの竹籠に菜の花

六つ目編みの竹籠 竹工芸家 初田 徹
六つ目編みの竹籠(制作中)

小ぶりの竹籠(制作中) 竹工芸家 初田 徹
小ぶりの竹籠(制作中)

 このところ、十五年ほども以前に作っていた籠を原型に、それを自分の中で改めて見直したうえで、新しい籠の形にしています。

 

 昔つくった籠を見て、自分で良いなと思うところと、改めるべきところが見つかります。

 

 また、もしも同じ籠を作ることを考えた時、時間の経過と時代の変化によって私自身が変わり、もの作りを取り巻く環境が変わったなかで、いま同じ籠を作るのは多くの場合には難しいことだと感じます。

 

 私の仕事は作業としては一人で行うものですが、世の中の仕組みが無事に保たれている前提で成り立つ仕事です。今までと同じ、ということは年々難しくなっていて、今後はさらに難しくなりそうです。

 

 * * *

 

 あと半月ほどすると、もう桜が開花しようかという頃です。このまま梅が咲き続けると、桜に追いついてしまうかもしれませんね。